柊カントのBLOG

米国からビジネス・政治・経済を考察する

カテゴリ: 海外で学ぶ・働く

2018年12月14日の現代ビジネスオンラインの記事より。

東大・京大・早慶→一流企業のエリートが「日本ヤバイ」と言う理由 

日本の一流大学を出て一流企業に勤め、その中でMBA社費派遣生として選抜されたとはいえ、悪くはないが一流ではないUS Newsランキング33位のUC Irvine MBAに行くしかなかった人たちによる寄稿である。その割に大変威勢のいい内容なのは編集者の善意のエディットがたくさん入ったのであろうと推察する。作られた炎上だったのかもしれない。

内容的には大した中身ではなくて(だから炎上する)、要するにMBA社費派遣というステータスを勝ち取り、留学中はそこそこの成績をとって凱旋帰国するという程度の目標しかない自分たちに比べて私費でMBAに入ってきている現地の若い奴らはもう少しまともなゴールを持っているのでビビったという話である。

自分のお金を使ってMBAという実学のプログラムにキャリアを中断して留学するならば、それにかかった「経費」(準備費用、学費、引越し費用や留学中の生活費など)と「逸失利益」(留学期間中に稼げるであろう給料など)分は少なくとも取り返さなくてはいけないと思うのは道理で、これは現地だろうが日本から来ていようが同じである。そのために卒業後取り返せる仕事を想定して授業やネットワーキングに取り組むというのは自然なことなのだが、寄稿者のように社費留学生という身分だと、この「経費」も「逸失利益」も基本的に会社がカバーしてくれるのでこの点に考えが及ばない。

特異な環境にいる自分たちが思ってもみなかったごくごく一般的な意見を聞いたからと言って、『日本ヤバイ』という結論を導くのは乱暴というか、個別の事情を一般化する誤りを犯している。

ただ社費MBA云々は置いておいて、専門性が高まっているビジネスの各分野においてジェネラリスト志向で育成される日本企業のビジネスマンが国際的な競争力を持ちにくいのは事実で、これを指してヤバイというのはその通りだと思う。社内異動によりパソコンを触ったことのない人をIT担当に配置し社内で育てているうちに、競合先はとっととスペシャリストを外部から採用して新規事業を始めているのだ。

欧米では基本的にそれぞれが専門性をもち、それを梃子にして転職を繰り返しながら昇給・昇進していくというのがスタンダードである。社内ローテーションの概念が乏しく、優れたマネージャーが勝手のわからない部門に異動させられることがないため、部下が優秀であればあるほど昇進の機会が限られている今の会社にとどまる理由がない。

考えてみれば
終身雇用制度を死守する日本(の官公庁・大企業)において、社内ローテーションや役職定年というのは上司が定期的にいなくなるという、若手から中堅従業員に希望の灯をともし続ける中々よいシステムである。このシステムは国内で全ての企業が同じルールのもと事業を行っていればよかった時代には有効だったが、終身雇用制度にしばられず社外からスペシャリストを集めてくることができる企業とのマッチアップを強いられる現代にはいささか不利な制度であると言わざるを得ない。



MBA留学後、米国で日系企業の現地社員として10年以上働いてきたが、最近とある日本企業に転職し、駐在員として米国で勤務することになった。今まで家族四人きちんと生活を維持できる給料をいただけるところで働いてきており、待遇に特に不満はなかったとはいえ、駐在員に付随する手当てを今回初めて目の当たりにするとなかなかの驚きではあった。もちろん会社によって事情は異なると思われるが、今回ご縁のあった会社での例を書き留めておくこととしたい。

ボーナスについては特に調整はないが、毎月の給料に関しては標準月額給与に海外勤務手当(場所にもよるだろうが米国で3割程度)と生活指数調整額による手当(マーサーの生計費指数を基準とした掛け目・米国西海岸で25%程度)がつく。さらに主だったベネフィットとして家賃補助、社用車支給などがある。これらは全て米国では課税所得としてカウントされるため税後の手取りベースでそれぞれの金額が手元に残るように計算して(グロスアップ)支給される。これらによって額面ではちょっとした上場企業の役員クラス以上の収入となる。

つまり定期的な出費項目の中で最も大きな額である家賃が会社持ちであるにも関わらず月々の給料は日本にいる時と比べて約1.6倍と非常に恵まれたステータスを享受できるのが駐在である。40年にわたるサラリーマン人生のうち2、3年から5年の期間限定の臨時ボーナスが駐在とはよく言われるところでもあるが、周り、特に規模の小さい会社に在籍しながら海外駐在を10年以上続けている猛者も少なからずおり、顔ぶれの変わらない本社ビルで日々上司の顔色を窺いながら何十年もかけて役員昇進を天に願うよりは、英語の勉強でもして駐在を勝ち取るのを狙うほうがリターン確率がよほど高いのではないかと思ったりする。

もちろん身の丈に合わない報酬を駐在員というだけでもらっていることを知っている現地企業の同僚や上司からは相当のプレッシャーをかけられるわけで、それなりにアウトプットを出さないわけにはいかないのだが、そういうのは給料が多かろうが少なかろうがサラリーマンである限り避けられないことである。

こういった事情は日本企業に特有というわけではなく、米国企業から日本にExpat(駐在員)として駐在していたアメリカ人の同僚や友人などに聞くと、Expatパッケージはどこもそんなもんらしく、皆同様にニコニコして思い出話を語ってくれる。

海外が身近になった今そこまで駐在員に手厚く保証することもなくなってきていると思うし、実際手当も昔に比べて縮小していると聞いているが、まともな方向に動いているということであろう。

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